プロの声はどう違う?

 声楽家やアナウンサーなど、声のプロと呼ばれる人たちがいる。声を出すために声帯の振動と声道の共鳴を用いていることは、彼らも普通の人と変わり ないはずである。では、なぜ響きのある声や明瞭な声が出せるのであろうか。

  オペラなどに代表される?深い響き?の洋楽的歌唱法では、男声においては喉頭を下降させ、長くなった喉頭の部分で共鳴を起こさせている。この共鳴によるホ ルマントが2400〜3200ヘルツ付近にあらわれ、歌声ホルマント(singing formant)と呼ばれている。女声の場合は、声帯を支えている筋肉をより緊張させて声帯を強く閉めることによってよい声を出しているようである。すな わち、”深い響き”のあるよい声は、声を出すための筋肉を巧みに操って出されているのである。

 カントリーウェスタン、ミュージカル、日本の民謡、長唄など、種々の歌唱法がある。これらもその使い方は異なるものの、いずれも声を出すための筋 肉を巧みに操って発声されている。そして筋肉を巧みに操るために、日々訓練し「プロの声」が生まれているのである。

  アナウンサーが話す明瞭な声をサウンドスペクトログラムで分析すると、ホルマントの移動がはっきりとしていることがわかる。連続音声を発話する場合、発話 器官(舌、顎など)の運動の制約から、音韻のなまけ現象が起きる。普通の人ではなまけ現象の程度が大きく、ホルマントの移動が随分なまけたものとなってし まう。しかし、アナウンサーは、発話器官を速く正確に運動させて声を発することができる。このため、ホルマントの移動がはっきりして明瞭な声となるのであ る。

 また、アナウンサーの声には、スペクトルの3000〜4500ヘルツあたりにエネルギーが 大きいところがあり、これがよく通る声を作り出している源であるといわれている。このエネルギーは、オペラの歌唱法と同じように声道内で共鳴を起こさせる ために生じる。アナウンサーの明瞭でよく通る声も、声を出すための筋肉を巧みに操って出されているのである。

 健康な声帯、声道とそれを動かすための筋肉をもっているならば、訓練さえすれば、誰でもよい声は出せるはずである。

日本音響学会編著 音のなんでも小事典 (講談社ブルーバックス)より転載

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