Q and A (201)

Q: 新幹線のトンネル坑口で発生する「トンネル微気圧波」とは,どのような現象なのか教えて下さい。
A: 列車がトンネルに高速で突入するとトンネル内に圧縮波が形成され,トンネル内を反対側の坑口に向かってほぼ音速で伝搬していきます。反対側の坑口に圧縮波が到達すると,坑口から周囲へパルス状の圧力波が放射されます。このパルス状の圧力波のことを「トンネル微気圧波」と呼び,その大きさ(振幅)が大きいと空気圧音が生じたり,坑口近傍家屋の建具ががたついたりし,環境問題になることがあります。
  微気圧波はその音圧波形がパルス状であることから周波数は直流成分が最も高く,高くなるにしたがって減少し,主成分は 20 Hz 以下です。そのため,微気圧波は低周波音の一つに分類できます。また,微気圧波が空気圧音を生じさせている場合には約 100 Hz の成分まで含んでいます。
  微気圧波の発生過程は,(1)列車のトンネル突入時の圧縮波の形成,(2)圧縮波のトンネル内伝搬,(3)トンネル坑口からの微気圧波の放射の3段階に分けることができます。(1)の段階では,列車のトンネル突入による圧縮波の波面勾配は,列車突入速度のほぼ3乗に比例します。また,トンネルが短い場合,(2)の段階での圧縮波の変形は無視できますが,長い場合は伝搬の過程で変形します。圧縮波の波面の時間勾配(圧力勾配)は,コンクリート平板を敷設したスラブ軌道トンネルでは有限振幅波の非線形効果により大きくなり,砕石が敷設されたバラスト軌道トンネルでは砕石層の散逸効果により小さくなります。 そして(3)の段階において,坑口から放射される微気圧波の大きさは坑口における圧縮波の波形に依存し,圧力勾配にほぼ比例します。従って圧縮波の変形が無視できる短いトンネルの場合には微気圧波の大きさは軌道によらず,列車突入速度のほぼ3乗に比例します。一方,トンネルが長い場合には上記の圧縮波の変形の影響が表れ,一般にスラブ軌道の場合にはトンネルが長いほど大きくなり,バラスト軌道の場合にはトンネルが長いほど小さくなります。
  微気圧波の大きさは坑口に到達した圧縮波の波面圧力勾配にほぼ比例することから,その低減には圧力勾配を小さくすることが必要です。そのためには,トンネルの列車突入側坑口に緩衝工と呼ばれるフードの設置や列車先頭部の延伸・形状の最適化などにより,(1)の段階で圧力勾配を小さくすることが効果的です。また,トンネル内の斜坑・立坑などの枝坑の利用や近接したトンネルをスリット付きのスノーシェルタで接続することにより,(2)の段階でも微気圧波対策をを行うことができます。

福田 傑((財)鉄道総合技術研究所)

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