Q and A (004)

Q:長野オリンピック開会式で5大陸で同時に第九を合唱していましたが,どのようにして実現したのですか?また,おもしろい裏話があったら教えて下さい。
A: 長野オリンピック開会式のフィナーレを飾った5大陸からの中継による第九合唱では,小澤征爾さんが長野県民文化会館でオーケストラ,コーラス,ソリストを前に指揮し,その映像と音声を5大陸(ベルリン,北京,シドニー,ニューヨーク,ケープポイント)に送ります。5ヵ国では小澤さんの指揮を見た影指揮者の指揮に合わせて第九を合唱します。各国にはそれぞれ200人のコーラス隊がおり,計1,000人の合唱の映像並びに音声が,衛星回線と ISDN 回線を通じて長野へ送られてきます。各国へ送る小澤さんの指揮の映像,また各国から送られてくる映像・音声は,伝送路での衛生の数,伝送媒体(FPU(局外マイクロ波中継装置)/ファイバ,ディジタル/アナログ等)によって,長野への到達時間が違ってきます。そこでこの時間差を解消するために今回開発した TLA (Time Lag Adjuster) により,それぞれの国の遅延を一番遅い国(今回は北京であった)に合わせます。ちなみに,一番早く到達するのは,当然長野県民文化会館で,ここの遅延量は約2秒となりました。会場では,きっちり合った各国のコーラスに観客も加わり,5万人の大合唱となりました。 今回ので最後までヒヤヒヤ・ドキドキはケープポイント(南アフリカ)でした。ここは,現地側において海上伝搬区間があり,ここがフェージングでやられないか?という心配が当初からありました。心配したとおりそれまでずーっとOKだったケープの映像・音声が,本番当日はフェージングの影響で乱れ,合唱直前には5分間隔で乱れる状態となりました。それが何と奇跡的なカメラ割(?)で,そのフェージングの網をくぐり抜けてスイッチングされたのです。回線責任者として反対したケープの現場が,終わってみると一番評判が良かったというのも,うれしいような気恥ずかしいような気持ちでした。何はともあれ,運にも恵まれ,成功して本当に良かったというのが今の率直な思いです。と同時に今回の仕事を通じて国内はもとより,海外にも大切な友人ができました。将来に向け大きな財産となった今回の仕事でした。

渡辺 義典(NHKテクニカルサービス)

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